袖口に視線を集める以外にあまり役に立ちそうにないカフスをわざわざ上着につけ、さらにそこからシャツの白いカフスやレースをのぞかせるなど、肉体労働をしなくてもいい有閑階級の特権的な見せびらかし以外のなにものでもないのではないか。二十世紀末の現在、スーツを仕立てるときに、凝る人はまず袖口に凝る。見る人もとりあえず袖口を見る。ふつうの既製服でも、袖口は切り目を入れたうえに、それを縫い閉じましたというような、ややこしい作りになっていたりするのだが(既製服では開けてしまったら袖のサイズ直しが困難だから)、仕立て服では、注文に応じて開いてくれる。開いた袖口は、刀の切羽になぞらえて「本切羽」と呼ばれる。「見る人」がまずそこを見るのは、仕立てか吊しかをとりあえずチェックするためであることが多い。
客観的な自分がわかったら、次は自分か何を伝えたいかです。スーツなど洋服を購入する場合、一般的には自分の好みや似合うもので仕事に着られそうなものを選びますよね。でも、外見コーチングではその先、あなたがスーツを選ぶ目的を明確にすることをお薦めします。私かパーソナルスタイリングのご依頼を頂くとき、漠然といまより素敵になりたいといったご要望はほとんどありません。取引先に信頼してもらえる自分になりたい、部下から一目置かれる上司になりたい、起業家として自分らしい個性を打ち出したいなど、それぞれのお客様に目標があります。そんな目標を叶えるためには、自分はどんな外見イメージであればよいのか?ということを一緒に考えていき、ファッションコーディネートを決めます。例えば、女性の部下からも相談されやすく、本音の話し合いができ、部下のやりたいことをサポートするような男性上司になりたいとします。そうなると必要とされるイメージは、親しみやすさだったり、安心感だったり、包容力であると言えるでしょう。となると、「親しみやすさ・安心感・包容力」を伝えるイメージを基本に、ビジネススタイルをコーディネートするということです。
思わずややと目を疑ったのは、正面とうしろ裾の、おそらく股間一帯に当たるであろうと思われる部分の変色である。薄暗い照明でもはっきりとわかるほど、そこだけ一帯、ぼんやりと茶色に変色しているのである!保存されていたシャツすべてがそうなっている。どうやら、シャツの前後で股間をカバーしていた痕跡と推測される。財団にはアンダーパンツまでは保存されていなかったが、ウィレット&フィリスーカニングトン夫妻の『下着の歴史』(一九九二年)によれば、男性のアンダーパンツはブリーフ型、ももひき型、などバリエーション豊かにちゃんと存在している。では、シャツの裾はパンツの中に入れていたのだろうか?そのあたりの正確なところは、今もってよくわからない。ただ、出石尚三氏は『洒落者事典』(グリーンアロー出版社、一九九八年)のなかで、「アスレティック・シャツ(アンダー・シャツ)はブリーフのなかに入れて着るのが正しい着こなしである、と指南しているのであるが、十八、十九世紀のリネンのシャツもひょっとすればそのような着方をされていたのかもしれない。